再婚後も養育費を確実に受け取る方法|公正証書の作成手順と強制執行の具体例を徹底ガイド

再婚後も養育費を確実に受け取る方法

養育費を確実に受け取り続ける上で、とても有効な手段となるのが公正証書の活用です。

特に再婚などで相手の状況が変わる場合でも、法的に強制力のある公正証書があれば安心感が違います。

ここでは、公正証書とは何か、どのように作成・活用するか、再婚後の養育費確保にどう役立つかを詳しく説明します。

公正証書とは?

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公式な文書です。

離婚の際に夫婦間で養育費慰謝料財産分与などの取り決めをする場合、公正証書にしておくと万一相手が支払を怠ったときにすぐに強制執行(差し押さえ)をかけられる効力があります。

このため、公正証書にはしばしば「強制執行認諾文言」という一文が入れられます。

これは「支払いを怠ったら直ちに強制執行されても構いません」という債務者の意思表示で、公正証書にこれが付いていると裁判をせずともいきなり差し押さえが可能なのです。

例えば、「毎月末日限り◯万円の養育費を支払うことを約し、もし支払いを遅滞したときは直ちに強制執行に服する」という文言を入れた公正証書を作っておけば、相手が再婚しようが失業しようが、その約束自体は生きています。

仮に支払いが止まれば、裁判所を通じて相手の給与や財産を差し押さえる手続きを取ることができます。

要するに「公正証書強力な債務名義」です。

家庭裁判所の調停調書・審判書も同様に債務名義ですが、公正証書は夫婦の合意で作成できるためスピーディーで柔軟という利点があります。

公正証書を作成していない場合は作成を検討

離婚時に公正証書を作っていなかった場合でも、後から作成することは可能です。

たとえば口約束やメールで養育費を決めていただけなら、再婚前にしっかり公正証書化しておくことをおすすめします。

もう離婚して何年も経つのに今さら…」と思うかもしれませんが、相手と話し合いができるなら新しい合意として作成すればよいのです。

公正証書の作成手順を簡単に説明すると以下のとおりです。

夫婦間での合意内容を整理

養育費の金額支払日支払期間(子どもが何歳になるまで)などを明確に決めます。

再婚に伴って変更する場合(例えば養子縁組するから養育費を減額するとか、逆に滞りなく払う約束を再確認するとか)も、この時点で合意に入れます。

公証役場に事前相談

公正証書案を作るため、公証人に相談予約をします。

内容が複雑でなければメールやFAXで相談も可能です。

公証人が文案を作成してくれますが、夫婦双方で署名するので二人で公証役場に行く必要があります。

必要書類の準備

当事者双方の本人確認書類(運転免許証など)印鑑証明書子どもの戸籍謄本などが必要です。

事前に公証人から案内されます。

公証役場で作成・署名

公証人の前で内容を確認し、問題なければ署名捺印します。
これで正本と謄本が発行されます。


費用は養育費総額によりますが、だいたい数万円程度です。

最近では公正証書作成費用を自治体が補助してくれる制度も増えています。

例えば新潟県や東京都江戸川区、さいたま市などで数万円の補助金制度があります。

お住まいの自治体に制度がないか調べてみると良いでしょう。

公正証書があることで得られる安心

公正証書を作成しておく最大のメリットは、相手が再婚して生活環境が変わっても、取り決めが簡単に反故にされない安心感が得られることです。

例えば、以下のような安心材料があります。

支払いが滞っても即対応できる

支払いが止まれば直ちに強制執行手続きに移れます。

具体的には、相手の勤務先に給与差し押さえの通知を出したり、銀行口座を凍結したりできます。

相手が再婚して新しい家庭を持っていても、その給与を差し押さえられたら困るのは同じですから、支払い再開へのプレッシャーになります。

減額交渉を牽制できる

公正証書があると相手も「法的拘束力が強い」という認識があります。

むやみに「減額してよ」と言い出しにくくなる心理効果があります。

仮に減額を求められても「公正証書通りにお願いします」と突っぱねやすいです。

支払い忘れを防ぐ

真面目な方でもうっかり支払いを忘れることはあります。

しかし公正証書を交わす場で「必ず払います」という強い約束をしていれば、相手の意識も変わります。

定期的に支払う仕組み(口座振替等)を整えるモチベーションにもなるでしょう。

心理的安心

何より受け取る側(あなた)が安心できます。

再婚して相手の状況が変わると「ちゃんと払ってくれるだろうか…」と不安になるものです。

公正証書があれば最悪法的措置を取れると分かっていますから、精神的な支えになります。

注意ポイント

公正証書が万能というわけではありません。

相手が収入ゼロ同然になってしまうと差し押さえるものも無くなります。

また、公正証書で取り決めた内容でも、後に事情変更が著しい場合は家庭裁判所で変更(減額など)される可能性はあります。

ただ、その場合も相手がちゃんと調停など法的手続きを取らない限り一方的に変更はできませんので、公正証書がバリアになっていることは確かです。

公正証書作成支援サービス・制度を活用する

前述のとおり自治体によっては公正証書作成費用の補助があります。

また、厚生労働省系の「養育費・親子交流相談支援センター」では、公正証書の作成方法のアドバイスも行っていますし、弁護士会による無料相談で文案のチェックをしてくれるところもあります。

経済的・手続き的なハードルを感じる場合は、ぜひこれらのサービスを利用してください。

さらに、近年では民間の養育費保証会社を利用する人も増えてきました。

これは公正証書などで養育費を取り決めた後、その支払いを専門の保証会社が保証してくれるサービスです。

保証会社に手数料(初回保証料と月額料)を支払えば、万一相手が滞納しても保証会社が立替払いしてくれ、後で保証会社が相手から回収してくれる仕組みです。

チェック こちらで養育費保証会社の口コミや評判をチェックできます。

自治体の中には、この保証料を補助するところもあります。

絶対に養育費を途切れさせたくない、毎月の振込遅れに一喜一憂するのは嫌だ…という場合は、こうしたサービスも視野に入れると良いでしょう。

ただし保証会社を利用するには公正証書が必須だったり、相手に一定の支払い能力が必要だったりします。

まずは公正証書をきちんと作ることが先決というわけです。