【養育費のカギは再婚相手?】元配偶者のパートナーを味方につける交渉術とは

養育費のカギは再婚相手?

相手(元配偶者)が再婚している場合、その新しい配偶者(再婚相手)を交渉に上手く活用できるケースがあります。

再婚相手は本来養育費支払いの義務者ではありませんが、心理的・現実的に、支払いに影響を及ぼす重要な存在です。

こちらでは、再婚相手を味方につけたり、再婚相手経由で支払いを促したりする方法について考えてみます。

再婚相手の立場と心理を理解する

まず大前提として、再婚相手(特に相手が再婚して新しい妻がいる場合、その妻)は、あなたやあなたの子どもに良い感情を持っていない可能性があります。

自分の配偶者の前の家庭にお金を払い続けるのは面白くない、できればやめてほしい…と思っているケースも少なくありません。

一方で、中には「前妻との子どもにもちゃんと責任果たしてね」と理解を示すしっかり者もいるでしょう。

いずれにせよ、再婚相手は家庭の財布を握っていたり、夫婦の意思決定に影響力を持っていたりするので、無視できない存在です。

再婚相手の心理はケースバイケースですが、以下のようなパターンが考えられます。
  • 敵対的パターン: 前の家族にお金も時間も取られたくない。養育費なんて払わなくていいと言っている。
  • 無関心パターン: 前の家庭のことには口出ししない。ただし自分たちの生活に影響ない範囲で…と思っている。
  • 協力的パターン: 前の子どもにも責任を果たすべきと配偶者に助言している。むしろ配偶者より再婚相手の方が常識的。

相手がどのタイプの再婚相手と一緒になっているか探ることが出発点です。

これは、お子さんが交流していれば子ども経由で雰囲気を聞けるかもしれませんし、共通の知人がいればそれとなく情報を得られるかもしれません。

再婚相手に直接連絡するのは要注意

それなら再婚相手に直接話してみよう」と考えるかもしれませんが、直接連絡を取るのは慎重にすべきです。

下手をすると「嫌がらせだ」と捉えられ、法的には接触禁止などのトラブルになりかねません。

特に相手が再婚相手にあなたのことを悪く吹き込んでいる可能性もあります。

元妻が金にうるさくて困ってる」なんて言われていたら、あなたからの連絡は火に油です。

ただし、調停など公の場では、再婚相手が同席することもありますし、間接的に再婚相手へメッセージを伝えることは可能です。

例えば、養育費調停で「新しい奥様にもご迷惑かけたくないので早く解決したいです」と言うなど、再婚相手にも配慮してますアピールをする戦法もあります。

これなら伝聞という形で再婚相手の耳にも入るでしょう。

どうしても連絡する場合は、角を立てないことが鉄則です。

丁寧に、「お忙しいところすみません。○○さん(元夫)とのお子さんの養育費の件で、ご相談させていただけないでしょうか」と低姿勢でお願いする形です。

それも、できれば文書(手紙)で出し、記録に残しておきます。

私は喧嘩腰ではなく、あくまで冷静に相談している」という証拠になります。

再婚相手がまともな人なら、そこで事情を知って話し合いに応じてくれるかもしれませんし、逆に怒ってきたらその手紙がこちらの正当性を示す材料になります。

第三者から再婚相手に働きかけてもらう

自分から再婚相手に行くのが難しい場合、共通の知人や相手の親族に再婚相手ごと説得してもらう手もあります。

たとえば、元夫の両親(子どもの祖父母)に「息子さんの奥さんにもお話を聞いてもらえませんか、私からは言いにくいので…」とお願いすることです。

祖父母からすれば孫のためですから、新しいお嫁さんに「頼むから理解してやってくれ」と言ってくれるかもしれません。

祖父母が絡むケースでは「養育費の不請求と引き換えに親権を譲る」など特殊な例もありますが、基本的に祖父母は孫可愛さで動いてくれる可能性があります。

また、調停になれば調停委員が「奥様にもご理解いただいて…」と説得してくれることもあります。

調停は当事者しか原則入れませんが、実務上夫婦で来る人もおり、調停委員が再婚相手に話をするケースもなくはありません。

もし相手が再婚相手を伴って調停に来たら、こちらは感情的にならずむしろ「お忙しい中ありがとうございます」と挨拶し、調停委員に任せるのが良いでしょう。

再婚相手にとってのメリットを考える

交渉術の一環として、再婚相手にとってメリットのある提案を考える手もあります。

たとえば、「今まとめて払ってもらえれば、将来の負担は減ります。長引けば延滞分がどんどん膨らみますから」と説明すれば、再婚相手としても「早く片付けてしまった方がこの先安心」と思うかもしれません。

また、「公正証書を作っておけば私たちから奥様に直接請求が行くことはありません」と伝えるのも安心材料になるでしょう。

新しい奥様としては、自分に請求が来るのでは…と不安があるかもしれませんが、養育費債務はあくまで元夫のものです。

ただ、万一元夫が亡くなった時、再婚相手との間の遺産分割などに影響が出る可能性はあります。

しかしその場合も、例えば生命保険に入れておくことで対処できるとか、再婚家庭に負担が残らない工夫を提案できればベストです。

要は、再婚相手の不安や不満を解消するようなメッセージを発信することです。

例えば、「私自身も早くこの問題を解決して、御家庭にこれ以上ご迷惑かけたくありません」と言えば、再婚相手も「早く終わらせたいのは同じ」と思うでしょう。

共通の目的を認識できれば、一緒に協力して元夫に働きかけるという状況も作りやすくなります。

養育費と養子縁組の関係

再婚との絡みで覚えておきたいのは、子どもが再婚相手と養子縁組をすると実親の養育費義務が基本的になくなるという点です。

もし元夫が「そっちが再婚して子どもが養子縁組したんだから払わない」と主張している場合、実際に養子縁組されているか確認が必要です。

養子縁組しているなら、確かに法的には免除される可能性が高いです。

逆に、相手の側が再婚して新しい連れ子と養子縁組した場合は、扶養義務が増えるので減額できる理由になります。

いずれにせよ、養子縁組の有無によって交渉の前提が変わるので注意しましょう。

再婚相手を通じた交渉まとめ

  • 再婚相手を直接説得するのは慎重に。できれば味方につけることを目指す。
  • 共通の知人や親族から再婚相手に働きかけてもらうと効果的な場合も。
  • 再婚相手の不安や不満を推測し、それを解消する提案をする。
  • 再婚家庭にも早期解決のメリットがあることを伝える。
  • 養子縁組など法的状況も確認し、勘違いや嘘を正す。

再婚相手は敵ではなく、協力者になり得るという視点を持つと、交渉の幅が広がります。

ただし一歩間違えると険悪になるので、くれぐれも丁寧なコミュニケーションを心がけてください。

感情的な対立を避け、「みんな子どものために良い形にしたい」という大義名分を前面に出していくと、再婚相手も理解を示してくれる可能性が高まります。