養育費を滞納している元配偶者(元夫・元妻)に対して、まず 「どんなメッセージを送るか」 は非常に重要です。
最初の伝え方ひとつで、相手の反応やその後の支払い意欲が大きく変わる可能性があります。
感情に任せて責め立てるような言葉をぶつけるのは逆効果です。

ビジネスライクな丁寧さで接する
相手はかつての配偶者とはいえ、離婚後の関係ではできるだけビジネスライクに接するのが得策です。
感情的なしこりが残っている場合でも、あえて仕事上の取引先に連絡するような丁寧さで臨みましょう。
「お金の話=シビアな話題」ですが、そこで怒りや悲しみをストレートに出すと相手の防御反応を招きかねません。
例えば、メールやLINEでメッセージを送る際には、「いつもお世話になっております」といったビジネスマナーに倣った書き出しや、敬語・丁寧語で統一することを心がけます。
離婚後に連絡を取るのは気が進まないかもしれませんが、「感情」より「目的(養育費の継続支払い)」を優先し、冷静で礼儀正しいスタンスを崩さないようにしましょう。
口コミ例
私は元旦那にメールするとき、社内メールみたいに丁寧に書きました。
最初はモヤモヤしたけど、ビジネス文書みたいにした方が相手もちゃんと読んでくれて、結果的に話し合いがスムーズになりました。

離婚後の父母のコミュニケーションは、できる限りビジネスライクに行うのがベストだと言われています。
丁寧すぎて損はありません。
むしろ元配偶者に「あれ、意外と落ち着いてるな」「こちらも誠実に対応しなきゃ」と感じさせる効果が期待できます。
感謝の気持ちを忘れずに伝える

例えば、「いつも養育費を振り込んでいただきありがとうございます。毎回、大切に使わせてもらっています。」といった一文から始めるのがおすすめです。
実際に支払いが滞って困っている側からすると、「何で感謝しなきゃいけないの?」と思うかもしれません。
しかし、これは相手のプライドや良心に訴えかける大切な心理テクニックです。
人は感謝されると「期待に応えたい」「良い人であり続けたい」という気持ちが生まれます。
相手に「あなたはこれまでちゃんとしてくれている」という前提で話し始めることで、「ここで払わないと自分は約束を破る悪い人間になってしまう」という心理的圧力をかける効果があるのです。
同時に、素直にお礼を言われることで相手のガードが下がり、その後の要請に耳を傾けてもらいやすくなります。
感謝の伝え方の例
毎月きちんと養育費を振り込んでいただきありがとうございます。
おかげさまで娘にも『お父さんからの大事なお金だよ』と話し、大切に使わせてもらっています。
このように、子どもも感謝している旨を伝えるのも効果的です。
相手に「自分の子どもが感謝してくれている」と感じさせれば、父(母)親としての役割を再認識し、支払い継続の意欲につながります。
実際、弁護士の木村氏も「養育費を支払ってもらったら必ずありがとうと伝えること」「子どもにもお父さん(お母さん)のおかげだと伝えておくこと」を強く勧めています。

未払いで困っている現状と子どもの状況を具体的に示す
感謝を伝えたら、続けて「未払い分があることでどれだけ困っているか」を具体的に説明しましょう。
ここでは単に「困っています」ではなく、生活への影響や子どもの状況を交えて訴えることがポイントです。
例えば、「○月と○月の養育費がないことで、今月は生活費がギリギリである」や「塾の月謝が支払えず子どもに我慢させている」といった具体的なエピソードを伝えます。
「ただ、3月分と4月分の振込みがなく、不安に思っています。…娘にとって、○○さんからいただく養育費はとても大切な教育費になっています。3月と4月の養育費については、塾の月謝の支払いがある5月15日までに入金していただけないでしょうか。」
この例のように、未払いで困窮している現状と、子どもに具体的にどんな支障が出ているかを含めて伝えると、相手も「自分の未払いが子どもを苦しめている」ことを認識しやすくなります。
特に「娘に肩身の狭い思いをさせたくありません」といった表現は、相手の親心に訴える強力なフレーズです。

未払い分の額と支払期限・理由を明確に提示する
次に、「いくらが未払いなのか」「いつまでに支払ってほしいのか」をはっきりと書きます。
これは相手に具体的な行動を促すために不可欠です。
人は漠然と「早く払って」と言われるより、「○月○日までに△△円」と示された方が動きやすいものです。
未払い額については、何月分から何月分までのいくらが未払いなのか正確に伝えましょう。
通帳の記録やメモを見返し、相手が混乱しないように数字で示します。

実際、支払う側が何ヶ月分滞納しているか認識していない場合もあり、「忘れているだけ」のケースもゼロではありません。
そして支払期限ですが、「○月○日までにお願いします」と日付を区切ります。
さらに可能であれば、その期限の理由も添えると効果的です。
例えば「◯月◯日に学校の教材費支払いがあるため」など、期限に実質的な意味を持たせます。
こうすることで、相手は「その日までに払わないと具体的な迷惑がかかるんだな」と理解し、放置しにくくなります。
「今回支払いが遅れている2か月分の養育費ですが、娘の学費支払いが迫っているため、6月末日までに入金していただけないでしょうか。」
このように期限と理由を明示すれば、相手も緊迫感を持ちやすくなります。

相手の事情にも理解を示す
効果的なメッセージでは、こちらの要求ばかり押し付けるのではなく、相手側の事情や苦労にも一定の理解を示す言葉を入れると良いです。
例えば、「あなたも仕事が忙しいとは思いますが…」とか「住宅ローンやご両親の介護費用で大変なのは承知していますが…」という一文を盛り込むイメージです。
相手に支払わない理由や事情がある程度想像できる場合は、それを代弁してあげる形で文章に加えます。

例えば、リストラや収入減があった可能性があれば「お仕事がうまくいっていないのかもしれませんが…」、再婚して新たな家族がいるなら「新しいご家庭もありご苦労されていると存じますが…」といった具合です。
「○○さんも住宅ローンやお義母さまの介護費用で大変だと思いますが、私たちにとっても養育費は欠かすことのできない生活費です。」
この文例では、相手の経済的負担(住宅ローンや親の介護)に触れつつ、その上で「それでもこちらも困っている」と柔らかく訴えています。
相手の言い分やプライドを尊重しつつ、「払えない事情があっても子どもの生活も大事」というメッセージを伝えるわけです。
人は自分の大変さを認められると、それ以上強く反発しにくくなる心理があります。

今後の支払方法や連絡の取り方について提案する
メッセージの最後には、今後の約束やコミュニケーションの取り方について触れておくのも有効です。
例えば、「今後は以前のように支払い期日に振り込んでいただければ幸いです」と述べて、ルールの再確認をします。
また、「どうしても遅れることがある場合は事前にご連絡ください」と伝えておけば、次回から無断滞納されるリスクを減らせます。

さらに、自分は話し合いの意思があることも明記しましょう。
例えば「あなたからの連絡をお待ちしています」と結ぶだけでも、「連絡していいんだな」と相手に思わせる効果があります。
相手が連絡しやすい雰囲気を作っておくことで、もし支払いに関して質問や提案(分割払いや支払猶予など)があれば、相談してきてくれるかもしれません。

- 丁寧な宛名や挨拶から始める。(ビジネスメールのように)
- これまでの支払いへの感謝を述べる。
- 未払いで困っている現状と子どもへの影響を具体的に伝える。
- 未払い額と支払期限(理由付き)を明示する。
- 相手の事情への理解を示す。
- 今後の支払いルールや連絡方法について触れる。
- 最後によろしくお願いします等の丁寧な結びで締める。

良い文例の例(上記ポイントを全て盛り込んだもの)
いつも養育費の振込みありがとうございます。
おかげさまで○○(子どもの名前)にも”お父さん(お母さん)からの大切なお金だよ”と伝え、ありがたく使わせてもらっています。
ただ、先月分と今月分が未入金のため、大変不安に感じています。
あなたもお仕事や新しいご家庭で何かと出費が多くご苦労されていると承知しておりますが、私たちにとって*○○さんからの養育費は生活に欠かせない支えです。
実際この2ヶ月間、家計が非常に苦しく、○○にも習い事を我慢させている状況です。
つきましては、滞っている2ヶ月分(計○万円)を○月○日までにお支払いいただけないでしょうか。
(○月○日に授業料の支払いがあり、このままだと○○に寂しい思いをさせてしまいます。)もしどうしてもその期日までに難しい場合は、事前にご相談いただけますと助かります。
今後もできれば毎月○日の期日まで**にお振込みいただければ大変ありがたいです。
何か事情がある際には遠慮なくお知らせください。あまり大事(おおごと)にはしたくありませんので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、お返事お待ちしております。
悪い文例の例
養育費の支払いがないのですが、どういうことでしょうか。至急支払ってください。もし支払ってくれないときは法的措置をとります。

どこが悪いかというと、
- いつから未払いか明記されていない(漠然と「支払いがない」では相手も認識が曖昧)
- 命令口調・高圧的(「至急支払ってください」は相手の反発心を煽ります)
- 期限が明示されていない(単に「至急」では人によって解釈が違う)
- 感謝や気遣いが一切ない(最初から責められると人は身構えます)
- いきなり法的措置の脅し(初手で脅迫めいたことを書くと話し合いが決裂しやすい)

実際、ある離婚カウンセラーは「請求の目的は相手に文句を言うことではなく、スムーズな支払いを促すことにある」と強調しています。
感情に任せて怒りをぶつけるのではなく、あくまで冷静に理性的に伝えることが大切なのです。
専門家のアドバイス
請求の文面は感情に負けず理性的に。
相手を言い負かすためではなく、円滑な支払い再開がゴールであることを忘れないでください。
最初からケンカ腰にならず、むしろ下手に出るくらいでちょうどいいのです。
以上を踏まえて、一度作成したメッセージは送信前に冷静な第三者の目で見直してみるとよいでしょう。
可能であれば友人や家族に読んでもらい、きつすぎないかチェックしてもらうのもおすすめです。
「ここはもう少し柔らかく」「この表現は角が立つかも」など客観的な意見を参考に修正すれば、より効果的なメッセージになります。
養育費未払い相手への最初のアプローチは、丁寧さと具体性と思いやりが鍵です。
穏やかながらもしっかりと自分たちの困窮を伝え、支払いを促す文面を心がけましょう。
