養育費を払わないなら会わせない?面会交流と養育費が「交換条件にならない」理由と対処法

養育費を払わないなら会わせない?面会交流と養育費

離婚後、「子どもに会わせてもらえないから養育費を払いたくない」「養育費を払ってくれないから子どもを会わせたくない」といった話を耳にすることがあります。

親同士の紛争が、子どもの面会交流(親子交流)と養育費の支払いを交換条件のように扱ってしまうケースです。

しかし、法律的には面会交流と養育費の支払いは別個の問題であり、一方が履行されないことを理由に他方を拒否することは認められていません。

法律上は「交換条件にはならない」

日本の民法766条には離婚後の子の監護について「面会交流」および「養育費」の取り決めが盛り込まれていますが、面会交流(親子の面会権)と養育費支払い義務はそれぞれ独立した権利・義務とされています。

簡単に言えば、「子どもに会わせてもらえなくても養育費は支払わねばならない」し、「養育費をもらえていなくても子どもを相手に会わせる努力をすべき」なのです。

双方は法律上リンクしておらず、交換条件にしてはいけないというのが大前提となります。

これは子どもの利益を最優先に考えた結果でもあり、養育費も面会交流も、子どもにとって大切なものです。

親の都合でどちらか一方を人質に取るような真似は、子どもの権利を侵害しかねません。

法務省の審議会でも「養育費と面会交流の問題について、両者は法律的に別問題であり、一方の履行がないことを理由に他方の履行を強制される関係にはないことを確認すべき」と明言されています。

つまり、「会わせてくれないから払わない」「払わないから会わせない」はどちらも認められないということです。

現実にはリンクしてしまうケース

法律理論上は別問題とわかっていても、現実の離婚後の関係ではどうしても両者が絡んでしまうことがあります。

以下によくあるパターンを見てみます。

養育費を支払う側の心理

非監護親(多くは父親)が「子どもに会えないのに金だけ払わされるのは納得できない」と感じ、養育費を支払わなくなるケースです。

親権も取れず子どもにも会えない。母親が育てているのだから母親が金銭面も負担すべきだ」という理屈です。

特に一度も面会交流が実現しないまま時間が経つと、「子どもに自分は必要とされていないのでは」と失望し、養育費支払いのモチベーションが下がる人もいます。

養育費を受け取る側の心理

監護親(多くは母親)が「養育費も払わない無責任な人に子どもを会わせたくない」と考え、面会を拒否するケースです。

お金も出さないのに父親ヅラするな」という怒りや、「経済的責任も果たせない人は親失格だ」という判断が背景にあります。

また、単に生活が苦しくて感情的に「払ってから言ってよ!」となってしまう場合もあります。

周囲の助言

時に祖父母や友人など周囲が「払わないなら会わせなくていい」「会わせてもらえないなら払う必要ない」といったアドバイス(というより煽り)をすることもあり、当事者の態度が硬化する例もあります。

実際、養育費を払っていない理由のアンケートでも、「親権を持てず母親側が負担すべきと思ったから(子どもに会えないから)」が上位を占めました。

また、面会交流を拒否する理由として「養育費を払ってくれないから」という声もSNSや相談掲示板で散見されます。

しかし、こうした対立は子どもに悪影響を及ぼします。

お子さんにとっては、両親のいざこざで「お金ももらえず、親にも会えない」状態になるのが最も不幸です。

どちらの親にとっても我が子は大切な存在のはずですから、感情はあってもグッと堪えて、お子さんのためにベストな対応をしてほしいところです。

どう対処すべきか

養育費を支払う側へのアドバイス

面会交流がうまくいっていないとしても、養育費の支払いは止めてはいけません。

養育費は子どもの生活を守るためのものです。

もし面会交流に不満があるなら、それはそれで家庭裁判所に面会交流調停を申し立てて改善を図りましょう。

不満から養育費を絶ってしまえば、相手との関係はさらに悪化し、より会えなくなる悪循環に陥ります。

統計的にも、面会交流がある父親の方が養育費支払い率が高い傾向があります。

お子さんとの交流を続けたいのであれば、まずは養育費をきちんと払い続けて「子どもへの責任を果たしている」という事実を示すことが大切です。

養育費を受け取る側へのアドバイス

養育費を払わない元配偶者に腹が立つ気持ちはもっともですが、子どもと別居親との面会は子どもの権利です。

経済的支援をしない人だからといって、子どもから親を奪うことはできません。

むしろ、面会交流を続けて父親(母親)としての自覚を持ってもらった方が、養育費支払いの説得もしやすくなる場合があります。

現に、「会わせてもらえるならちゃんと払おう」という声も多く聞かれます。

面会交流自体はお金のように強制執行する手段がありませんが、一度家庭裁判所で面会交流のルールを決めておけば、相手もルールを守ろうとするでしょうし、守らなければ履行勧告などを通じて改善を促すこともできます。

法律的手段

面会交流と養育費は切り離して、各々必要な法的手続きを取ることが重要です。

養育費不払いへの対処法としては、内容証明の送付、調停申立て、強制執行(給与差押え)などが考えられます。

一方、面会交流拒否への対処法としては、面会交流調停を申し立て、具体的な日時頻度等を取り決めることが有効です。

それでも相手が会わせない場合は、家庭裁判所による履行勧告・間接強制(金銭の支払いを科す)等の手段があります。

共同で子どもを支えるという発想

究極的には、両親が協力して子育てするという姿勢が望ましいです。

離婚しても父母であることに変わりはないのですから、役割は違えど二人で子どもの成長を見守るのが理想です。

面会交流(心理的・社会的なサポート)と養育費(経済的サポート)は、子どもにとって両方欠かせません。

どちらか一方でも欠ければ、子どもは寂しい思いをしたり生活に困窮したりする可能性があります。

お互い歩み寄り、子どものために面会も養育費もきちんと実現させることが、結果的に子どもの幸せにつながります。

もちろん、DVなどで面会交流自体が子どもに悪影響を及ぼすケースもあります。

そのような特殊事情がある場合は、安全確保を最優先にすべきです。

ただ、それ以外の一般的な状況では、「会わせない・払わない」の泥仕合は避けましょう。

面会交流と養育費は別問題であり、互いに人質にはできません。

不満がある場合はしかるべき法的手段で解決を図り、子どもを巻き込まないようにしましょう。

子どもの健全な成長のために、親としてできることをそれぞれ果たす姿勢が大切です。