元配偶者が「今、失業中で収入がないから養育費は払えない」と言ってくる場合もあると思います。
では、相手が無職の場合、養育費の請求や支払いはどうなるのでしょうか。
結論から言えば、相手が失業中であっても養育費の支払い義務自体は免れません。

働ける能力があるなら支払い義務あり
法律的には、無職で収入がゼロでも即座に「養育費払わなくていい」とはなりません。
裁判所は「健康で働く意思さえあれば収入を得られる」と判断すれば、潜在的稼働能力に基づいて養育費を認めることがあります。
特に、働こうと思えば働けるのに職探しをしていない場合や、一時的な失業期間で近く就職が見込まれる場合は、無職でも養育費の支払い義務が認められる場合があります。
要するに、「仕事がない」は養育費不払いの正当な理由にならないことが多いのです。

減額調停を求められた場合
相手が本当に失業して収入が途絶えた場合、養育費額の見直しを求めて減額調停を申し立ててくる可能性があります。
調停では相手の失業理由や資産状況、再就職の見通しなどが考慮されます。
リストラなど不可抗力の失業で当面収入ゼロという場合、調停委員から「一時的に支払額を下げてはどうか」と提案されるかもしれません。
一方、働けるのに自発的に辞めた場合や怠惰に無職でいる場合は、減額が認められにくいです。
あなたとしては、相手に資産があるならそこから支払えるはずだとか、失業が一時的なら後でまとめて支払うべきだ、といった主張をしましょう。

失業の程度による対応方法
相手が一時的に職を失っただけですぐ再就職が決まる見込みなら、支払い再開までの猶予期間を設ける提案もあります。
例えば「〇月から就職活動するので△月までは月2万円、その後通常通り5万円払う」と合意できれば、公正証書などに残しておくと安心です。
一方、長期無職で収入ゼロが続く場合は、現実問題として差押えしても取れるものがありません。
この場合、権利としての養育費請求は可能ですが、実効的な回収は難しいでしょう。
とはいえ、支払い義務自体は消えませんから、就職するまでは未払いとして蓄積され、就職後にまとめて請求することもできます。

潜在的稼働能力の主張
相手が「病気で働けない」「高齢で就職先がない」等の場合を除き、多くの場合裁判所は潜在的稼働能力を考慮します。
「本来働けるはずなのに働いていないだけだ」という主張を裏付けるために、相手の年齢・職歴・健康状態を把握しておきましょう。
例えばまだ30〜40代で健康なら、月20万円程度の収入は潜在的に得られるとみなされ、そこから養育費算定がされる可能性があります。

柔軟な対応も考える
相手が本当に困窮している場合、養育費の一時猶予や減額に応じてあげる代わりに念書を書かせるという手もあります。
「○月までは月1万円、その後就職したら月○万円支払う。未払い分は就職後○年以内に必ず清算する」等の合意を書面化し、公正証書にしておけば、相手も安心して再起に励めるでしょうし、あなたも公的な裏付けを得られます。
大切なのは子どもの利益です。
相手を過度に追い詰めて失踪されたり闇労働に走られては元も子もありません。

まとめると、相手が失業中でも法的には養育費支払い義務は残ります。
状況に応じて減額や猶予の交渉はありえますが、全く払わないという選択肢は基本的に認められません。
請求するときは相手の潜在的な収入可能性を主張し、できれば就職促進にもつながるような支払い計画を提案するのも手です。
相手が復職した暁には、滞納分も含めてしっかり支払ってもらうよう、引き続き権利を主張していきましょう。
