ひとり親家庭で養育費が支払われないケースが多発していますが、その理由は一様ではありません。
ここでは、養育費不払いの主な理由をランキング形式で紹介し、その背景にある心理や状況を解説します。

第1位:親権を持っていないから自分は払う必要がないと思った
離婚時に親権を得られなかった非監護親(特に父親)に多い理由です。
「子どもは相手(母親)が育てることになったのだから、費用も相手が負担すべきだ」と考えてしまうパターンです。
ある調査でも、「自分は親権が取れず母親側が負担すべきだと思ったから」が不払い・減額の理由のトップに挙げられています。
しかし、親権がなくても法律上の父親(母親)であることは変わらず扶養義務はあります。

第2位:子どもに会わせてもらえないため支払いたくない
こちらも非常に多い理由です。
「面会交流をさせてもらえない腹いせ」「子どもに会えないのに金だけ払うのは不公平」といった感情から、不払いに走るケースです。
ランキング1位の理由と合わせ、アンケートでは経済的理由よりも感情的・心理的理由の方が上位に来ることが明らかになっています。
この背景には「子どもへの愛情を感じられない状況で払うモチベーションが湧かない」という心理があります。
しかし先述の通り、法律的には全く正当化できない理由ですし、子どもの利益を無視しています。

第3位:経済的困難(収入減・失業など)
「払いたい気持ちはあるがお金がないため払えない」というケースです。
リストラや病気で失業した、事業が失敗した、多額の借金を抱えた等、支払いたくても物理的に払えない状況に追い込まれる人もいます。
母子家庭側からすると「それでも子の親なら頑張って払ってほしい」と言いたいところですが、ない袖は振れません。
この理由の場合、事前に減額調停を申し立てていれば不払いにはならなかったものの、プライドや手続きの煩わしさから放置してしまったケースもあります。

第4位:再婚・新しい家族の優先
支払う側が再婚し、新たな配偶者や子どもができた場合、前の家族への支払いより新しい家庭を優先してしまうケースがあります。
特に新たな子どもが生まれると生活費がかさみ、「正直、前の子に送金する余裕がない」という状況も。
あるいは新しい配偶者が「前の家庭にお金を送りたくない」と反対するケースもあります。
こうした理由で支払いが滞るのは珍しくなく、養育費保証会社の調査などでも「再婚し子どもが生まれたことで支払いが滞った」という声が報告されています。

第5位:取り決めをしていない/口約束だった
養育費自体を明確に取り決めていなかった場合や、口約束だけで離婚してしまった場合、支払う側に「払わなくても特にお咎めがない」という心理が働き、不払いになることが多いです。
「サインした紙もないし、請求もされないからつい…」という形です。
実際、母子家庭の約半数は養育費の取り決め自体をしていないとの統計もあります。
そうすると最初から支払いがないまま終わってしまう例も多々あります。

第6位:相手とかかわりたくない(関係断絶)
離婚時に深い確執があり、「もう二度と元配偶者と関わりたくない」という思いから養育費の取り決めを避けたり、支払いを途中でやめたりするケースです。
特にDV被害などがあった場合、被害者があえて養育費を求めないこともあります。
一方、加害者側が「もうお前とは関わらない」と開き直り養育費も送らないことも。
この理由はお金云々より人間関係の断絶が背景にあります。

第7位:養育費の使途への不信感
支払う側が「渡した金を子どものために使っていないのでは」と疑い、払いたがらないパターンです。
例えば「元妻が養育費を自分の遊興費に使っているに違いない」と思い込んでしまうケースです。
確かに、お金の使い道は送金する側には見えません。
しかし、だからといって勝手に決めつけて支払いを絶つのは筋違いです。
子どもを育てれば食費光熱費住居費など様々な費用にお金が出ていくのは当然で、それらも含めて養育費です。
「子どもに直接渡したい」と言う人もいますが、子どもが幼いうちは現実的ではありません。

第8位:法の不備・強制力不足
養育費不払いには、制度上の問題も影を落としています。
「払わなくても罰則がない」「逃げ得になってしまう」という状況が長年放置されてきました。
払わない親に社会的制裁がほとんど無いため、「別に払わなくてもいいや」と考えてしまう人もいます。
これは個人の理由というより構造的理由ですが、「払わないと逮捕される」くらいのペナルティがあればここまで不払いは多くなかったかもしれません。
現在、国も情報提供制度や養育費保証制度の整備に動き出していますが、まだまだ発展途上です。

第9位:周囲からの悪い助言
先ほども触れましたが、友人知人や親族から「もう払わなくていいんじゃないか」「前の家庭より今の家庭が大事だろ」といった良くない助言を受けて、不払いに傾くケースもあります。
本人だけなら迷っていたものを、第三者に背中を押されてしまうパターンです。

第10位:その他個別の事情
上記以外にも、「子どもが自分の子か疑っている」「離婚時に慰謝料をたくさん払ったので養育費まで手が回らない」など、各家庭固有の事情がある場合もあります。

養育費の不払い理由から見えるもの
こうしてみると、養育費不払いの理由には経済的理由と心理的理由の両面があることがわかります。
上位には心理・感情面の理由が来ており、不払い問題は単なるお金の問題ではなく、人間関係の問題でもあるのです。
解決策としては、経済的理由には公的支援や減額協議といった対応を、心理的理由には面会交流の充実や啓発による意識改革などのアプローチが必要でしょう。
いずれの理由にしても、結局被害を被るのは子どもです。
どんな理由があろうとも、子どもの権利である養育費を一方的に断つことは許されません。
不払いを正当化できる理由は原則存在しないのだ、という基本を忘れてはならないでしょう。
もし養育費を払ってもらえず困っている場合は、相手の言い訳に惑わされず、法的に取れる手段を粛々と取っていくことが大切です。
