養育費の未払いに悩んでいた方々が、さまざまな方法で養育費を回収すことができた成功事例を5つ紹介します。
同じシングルマザー・シングルファザーの立場の人たちがどのように工夫し、どんな手続きを経て問題を乗り越えたのか、その具体的なストーリーを見ていきましょう。

1つめの養育費回収事例
離婚後しばらくして元夫からの養育費が途絶え、10年以上もの長期間未払いが続いていた事例です。
Aさん(シングルマザー)は当初、元夫の居場所もわからず半ば諦めていました。
しかし、2020年に法律が改正され、家庭裁判所を通じて相手の勤務先や財産情報を取得できる制度が整備されたことを知り、思い切って行動を開始します。
まず家庭裁判所で養育費の支払い命令(債務名義)を取得し、その後強制執行の手続きへ。
改正民事執行法に基づき、年金事務所から元夫の勤務先情報を入手し、会社の給与を差し押さえる申し立てを行いました。
結果、見事に給与差押えが認められ、13年近く滞っていた養育費の回収に成功しました。
Aさんは「まさか自分一人でここまでできるとは。新しい制度のおかげで泣き寝入りせずに済みました」と振り返っています。

2つめの養育費回収事例
2つ目は、元夫に対して家庭裁判所の調停を申し立て、話し合いによって養育費を取り決め直した事例です。
Bさん(シングルマザー)は8年前に離婚した当時、口約束で月々の養育費を決めただけでした。
その結果、最初の数ヶ月こそ支払われたものの、その後ぱったりと支払いが止まってしまいました。
幼い子どもを抱えて働ける時間も限られ、Bさんは住む場所を失い友人に頼ったり、ストレスで心身を病んでしまった時期もあったそうです。
しかし子どもが成長し少し生活の余裕が出てきたころ、「このままではいけない」と一念発起。
専門家に相談し、行方の分からなかった元夫の住所や職場も調査で判明しました。
そして家庭裁判所の調停手続きを利用し、電話会議の活用などもあって2回の調停で年間96万円(月8万円)という当初希望通りの養育費額で合意が成立します。
調停成立後すぐに約20万円の未払い分も支払われ、以後は安定的に養育費を受け取れるようになりました。
「本当に調停で話し合いがまとまるのか不安でしたが、わずか2回でほぼ希望通りに決まって驚きました」とBさん。

3つめの養育費回収事例
次は、離婚時に公正証書を作成していたことが功を奏した事例を紹介します。
Cさんは離婚の際、公証役場で養育費月額や支払い方法を明記した公正証書を作成していました。
最初のうちは元夫から養育費が支払われていたものの、元夫が再婚したのを機に振り込みが滞り始め、連絡も取れなくなってしまいました。
そこでCさんは公正証書という法的な武器を活用し、自力で強制執行の手続きを取ることに。
内容証明郵便で督促しても応じない元夫に対し、家庭裁判所からの履行勧告(支払いを促す通知)も行いましたが、それでも反応がないため給与の差押えを申し立てました。
結果は給与差押えの成功。
勤務先と直接やり取りを行い、滞納していた養育費を分割で回収することができました。
Cさんは「公正証書を持っていたおかげで、自分で手続きして強制執行までできた。泣き寝入りしなくて本当によかった」と綴っています。

4つめの養育費回収事例
4つ目は、弁護士や専門機関のサポートを得て養育費を一括回収できた事例を紹介します。
Dさん(シングルマザー)は元夫が支払いを渋る未払い養育費約200万円を抱えていました。
自身で元夫に連絡しても取り合ってもらえず、限界を感じたDさんは弁護士に相談。
弁護士は元夫の勤務先が銀行で安定収入があることを突き止め、ただちに給与の差押え手続きを進めました。
差押えが裁判所に認められると、元夫の会社には給与の半分をDさんに直接支払うよう命令が下ります。
すると、それまで音信不通だった元夫からDさんのもとに突然電話やLINEが来るようになりました。
元夫は「給料の半分も取られたら生活できない。職場で立場がない。毎月15万円払うから頼むから差押えを取り下げてくれ」と懇願してきたのです。
しかしDさんは弁護士の助言通り一切応じず、そのまま差押えを続行。
結果、滞納分の約8割にあたる160万円を一括で支払わせることに成功しました。
わずか申立てから3ヶ月ほどでのスピード解決となり、「専門家に頼って正解でした。もっと早く相談すればよかった」とDさんは振り返ります。

5つめの養育費回収事例
最後は、話し合いによって養育費の増額や支払い再開が実現した事例を紹介します。
Eさん(シングルファザー)は離婚後、元妻からの養育費を受け取れずにいました。
元妻は当初月2万円を約束していましたが生活が苦しいとの理由で支払いが途絶え、Eさんは男手一つで子どもを育てながら仕事と家事に追われる日々でした。
子どもが成長するにつれ教育費もかさみ、このままでは子どものために十分なことをしてやれないと感じたEさんは、一度じっくり元妻と話し合う決心をします。
子どもの現在の状況や将来に必要なお金の話、そして何より子どもの幸せのために協力してほしいと真摯に伝えました。
最初は渋っていた元妻も、Eさんの熱意と子どもの写真アルバムなどを見て次第に考えを改め、「自分も母親としてできることはしたい」と心境に変化があったそうです。
その結果、止まっていた養育費の支払いが再開されただけでなく、月額も以前の2万円から3万円に増額してくれることになりました。
「正直、法律に訴えるしかないかとも思いましたが、話し合いで気持ちが通じて本当によかったです。」とEさんは胸を撫で下ろしました。

以上5つの事例からも分かるように、養育費未払いへの対処法は一つではありません。
それぞれの事情に合わせ、調停で合意を取り付ける、公正証書や裁判の力を借りる、強制執行で確実に取り立てる、専門家に頼る、根気強く話し合うなど様々な手段があります。
大切なのは「泣き寝入りしないこと」です。