【養育費の決め方】公正証書と家庭裁判所調停、強制力や手続きの違いを徹底解説!

【養育費の決め方】公正証書と家庭裁判所調停、強制力や手続きの違いを徹底解説!

養育費の取り決め方法には大きく分けて「公正証書を作成する方法」と「家庭裁判所で調停・審判」を行う方法があります。

それぞれ手続きの流れや法的効果に違いがあるため、自分たちの状況に合った方法を選ぶ必要があります。

また、単に夫婦間で私的に合意書を取り交わすだけの場合(公証人を通さない協議離婚書面)もありますが、それは強制力の面で弱いため、ここでは主に「公正証書 vs 裁判所」の違いに焦点を当てて解説します。

公正証書で養育費を決定する方法

公正証書方式は、夫婦間で養育費の額や支払い方法について合意が成立している場合に、その内容を公証人役場で公正証書という形に残す手続きです。

メリットは、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成すれば相手が支払いを怠ったときに直ちに強制執行(給与や財産の差押え)が可能になる点です。

裁判を経ずにいきなり差押えができるため、公正証書さえ作っておけばかなり安心感があります。

公正証書を作るには、公証人役場に双方(または代理人)が出向き、公証人に離婚給付等契約書を作成してもらいます。

費用は養育費総額によって変わりますが、例えば月5万円20年間(総額1200万円)程度なら数万円~5万円前後です。

必要書類は双方の身分証、印鑑証明、戸籍謄本などです。

事前に公証人と打ち合わせを行い、文案を練っておくことになります。

公正証書方式の注意点

相手が公正証書作成に協力的でないと利用できません。

相手が「公正証書は嫌だ」と拒否する場合、無理やり作ることはできず、その場合は調停など別の手段に移行せざるを得ません。

また、公正証書で取り決めた場合の養育費債権は法律上「5年で消滅時効にかかる」とされています。

調停調書の場合は10年で時効となるため、公正証書は若干時効期間が短い点には留意が必要です。

いずれにせよ、相手と円満に話し合いができているなら公正証書の作成が最良の方法と言えます。

家庭裁判所で養育費を決定する方法

夫婦間の直接協議で合意できない場合や、公正証書作成に相手が協力しない場合は、家庭裁判所の調停を利用するのが一般的です。

養育費について話し合いがまとまらない場合、いきなり裁判(訴訟)というより、まずは家庭裁判所での調停が法律上も義務づけられています。

調停では調停委員(男女一名ずつの有識者)が間に入り、双方の言い分を聞きながら合意点を探ります。

お互い顔を合わせず別室で交互に話を聞く形式も可能なので、安心して利用できます。

調停の結果合意できれば、調停調書という文書が作られます。

この調停調書には公正証書と同様に強制執行力があり、もし相手が不払いをしたら給与などの差押えを行うことができます。

調停で合意できなかった場合は、家庭裁判所の審判に移行します。

審判では裁判官が双方の事情を考慮し、養育費額や支払期間などを決定します。

審判で出た結論(審判書)も確定すれば債務名義となり、強制執行可能です。

つまり調停調書や審判(判決)による取り決めなら強制執行が可能で、消滅時効も10年となります。

家庭裁判所を利用するメリットは、相手が話し合いを拒否していても公権力で呼び出せる点、そして合意が得られれば公正証書と同等の効力が得られる点です。

費用も印紙代1,200円程度と安価で利用しやすくなっています。

また、調停委員が間に入ることで冷静に話し合いがしやすく、算定表に基づいた適正な範囲での解決が図られる傾向があります。

家庭裁判所利用の注意点

デメリットは、手続きに時間がかかる場合があることです。

調停は1~2か月に1回程度のペースで期日が設定され、合意に至るまで数回~十数回かかることもあります。

相手が頑なな場合は長期化や不調(不成立)もあり得ます。

また、公正証書と比べ手続きがオープン(公開)ではないとはいえ、裁判所に出向く心理的負担を感じる人もいるでしょう。

しかし、専門家のサポートを受けながら進められるという意味では心強い場でもあります。

公正証書と調停調書の主な違い

上記を踏まえ、公正証書と調停調書それぞれの特徴を簡単に比較します。

成立までのプロセス

公正証書は当事者間の合意が前提。調停調書は合意がなくても調停・審判で決定可能。

第三者の関与

公正証書は公証人(行政)が内容を文書化。調停は調停委員・裁判官(司法)が仲介・判断。

強制執行力

どちらもあり。(公正証書は強制執行認諾文言付きで、調停調書は判決と同様の効力)

消滅時効

公正証書は5年、調停調書は10年。

費用

公正証書はケースによるが数万円程度の手数料。調停は数千円程度。(郵券代含めても1万円未満)

時間

公正証書は双方合意済みなら短期間(数日~数週間)で作成可能。調停は合意形成に時間がかかると長期化する。(月単位~年単位)

心理的ハードル

公正証書は協議が円満ならスムーズ。調停は相手との直接対決を避けられるが、裁判所という場に出向く必要あり。


状況に応じてこれらを使い分けましょう。

話し合いが可能であれば公正証書で早期に決着をつけ、不払いリスクに備える。

話し合いが難しければ無理に協議せず、家庭裁判所という公的な場で落とし所を探る。

いずれにせよ子どもの権利を守るために利用できる制度は積極的に活用することが大切です。

私的な合意書だけでは不十分

中には「離婚の際に二人でサインした念書があるから大丈夫」という方もいるかもしれません。

確かに双方署名の合意書があれば証拠にはなりますが、それだけでは相手が払わない時に強制力を発揮できません。

結局支払わなければ裁判を起こして判決を取る必要が出てきます。

それでは手間も時間もかかります。

そういった意味でも、最初から公正証書か調停調書といった強制執行力のある形で取り決めることが望ましいのです。

もし離婚協議書止まりで合意してしまった場合でも、後から相手が協力するなら公正証書に作り直すことも可能です。

あるいは不払いが発生したらすぐに調停を申し立て、公的な形に移行しましょう。

以上、養育費決定方法としての公正証書と裁判所手続きの違いを解説しました。

どちらを選ぶにせよ、一番避けるべきは「何も決めないまま離婚してしまう」ことです。
それだけはないようにしてください。