
再婚後の養育費に関する噂話や思い込みから、思わぬ損をしたりトラブルになったりすることのないよう、真実を押さえておいてください。
誤解1: 「母親が再婚したら、元父親はもう養育費を払わなくていい」
真実: いいえ、原則として支払い義務は続きます。
親は離婚後も子を扶養する義務があり、母親の再婚だけで父親の養育費義務が自動的に消えることはありません。
新しい夫が子どもと養子縁組していない限り、元父親は引き続き養育費を支払う責任があります。
実際の法律相談でも「再婚しただけでは養育費減額は認められない」と明言されています。

誤解2: 「父親が再婚して新しい家庭を持ったら、養育費は払わなくていい」
真実: いいえ、これも義務は継続します。
父親が再婚しても、実子への養育費支払い義務は残ります。
ただし、新家庭で子どもが生まれるなど扶養家族が増えた場合は、家庭裁判所で認められれば養育費の減額があり得ます。
しかし自分で勝手に止めていいわけではなく、正式な調停・審判を経る必要があります。

誤解3: 「再婚相手と子どもが養子縁組したけど、その後も前の配偶者に養育費を請求できる」
真実: 基本的には請求できません。
養子縁組により、再婚相手が法律上の親(養親)となった場合、元の親(実親)は扶養義務が第二順位に下がります。
養親に十分扶養能力があれば、実親の養育費負担は免除されます。
従って、養子縁組後に前の配偶者へ養育費を請求するのは通常認められません。

誤解4: 「新しいパートナーの収入が高い場合、養育費は減額される」
真実: いいえ、新パートナーの収入は原則関係ありません。
再婚相手は法的扶養義務者ではないため、その収入が高くても元親の養育費負担額を直接減らす理由にはなりません。
実際、「再婚相手に相当の収入がある場合でも、それは元夫の養育費減額理由にはならない」との法律相談回答があります。

誤解5: 「新しい夫(妻)がいるのに、前の配偶者からお金をもらい続けるのは後ろめたいし非常識だ」
真実: そのようなことはありません。
養育費はあくまで子どもの権利であり、新しいパートナーがいるかどうかとは無関係です。
むしろ子どもの利益のため、受け取れるものは受け取る方が望ましいです。
国も養育費確保を推進していますし、何ら恥じることはありません。

後ろめたさを感じる必要はないので胸を張りましょう。
誤解6: 「離婚時に養育費を決めなかったから、もう請求できない」
真実: いいえ、離婚後でも請求可能です。
離婚届提出後であっても、養育費請求調停を起こして養育費を決めることができます。
再婚とは直接関係ありませんが、離婚から時間が経って再婚するタイミングでやはり養育費が必要と感じる場合でも、子どもが未成年であれば請求できます。
時効のようなものは基本的になく、子が社会的自立するまで請求権は持続します。

誤解7: 「再婚すると児童扶養手当(シングルマザー手当)が止まるから、養育費ももらえなくなる」
真実: 児童扶養手当と養育費は別問題です。
確かに公的手当(児童扶養手当)は再婚すると支給停止になります。
しかし養育費は先述の通り請求可能です。
むしろ手当が無くなる分、養育費をしっかりもらわないと家計が苦しくなるケースもあるでしょう。
児童扶養手当を受給していた方は、再婚するならなおさら養育費を確保することが重要です。
なお、養育費を受け取っていると手当額が減額される仕組みは以前ありましたが、現在は解消されています。

遠慮なく両立させましょう。
誤解8: 「養育費の取り決めをしていないから、再婚してももらえない」
真実: 取り決めがなくても今から決めればもらえます。
離婚時に何も決めていない場合でも、子どもが未成年であれば先述の調停などで取り決め可能です。
再婚がきっかけで「あの人に今更言い出しづらい」とためらう気持ちもあるかもしれませんが、勇気を出して請求しましょう。

公正証書や調停調書があれば再婚後も強力な武器になります
誤解9: 「養育費を払っていない人でも、再婚したらもう請求できない」
真実: いいえ、再婚とは関係なく請求できます。
支払いを怠っている元配偶者が再婚しようがしまいが、未払い分も含め請求する権利は残っています。
むしろ再婚したことで経済的に落ち着いたなら回収の好機です。
調停や裁判を活用すれば差し押さえも可能です。

以上、主な誤解とその真実を挙げました。
要するに、再婚で養育費の権利義務が劇的に変わることはほとんどないということです。
変わるとすれば養子縁組など特殊なケースのみで、多くの場合「再婚しても今まで通り」が基本です。
ただし人々の思い込みや感情が絡むことでトラブルが起きやすいので、正しい知識を身につけ、落ち着いて対応することが大切です。
養育費は子どもの権利であり、再婚したからといってその大切さが変わるわけではありません。
